午前11時少し過ぎ、熱海見番に入る。今日と明日の二日間、
熱海芸妓置屋連合組合主催の”熱海をどり”が開催される。見番2階の、
来賓席中央にサプライズなゲスト、川勝静岡県知事の名前があった。
斎藤市長に続いて舞台に立った川勝知事、付け焼き刃的なスピーチとは違い、
驚く程事、熱海芸妓衆をリサーチしていた。地元静岡の芸妓衆を引き合いに
軽妙洒脱な話術で会場を沸かせた。この知事、目線が低く話しが上手い。
知事の経歴を辿れば、早稲田からオックフフォード大学に学び、
静岡文化芸術大学学長から第53代静岡県知事とエリートコース一直線だ。
思い出すのは数年前の知事選だ。その選挙戦の最中に、
起雲閣で開催された熱海地区決起大会。当時小生、知事の支持母体である
熱海市議会の民主党議員に誘われ、支持者の一人として演説を聴いている。
肉眼で見るのはその時以来だが、相変わらず偉ぶるところが見えてこない。
場内の空気を巧みにつかみ、笑いを誘う耳障りの良い話術が際立った。また、
昨年の熱海をどりは、東日本大震災や計画停電の影響で中止となったものの、
熱海市が協賛する「湯めまちをどり華の舞」(毎週土日)には毎年、トータルで
10000人を超える来場者を見番に集めている。観光客減が続く熱海温泉にあって、
熱海芸者衆は貴重な観光資源と賞賛されている。ただ、今の熱海温泉は
芸者衆とコンパニオンが少ない”パイ”をめぐり競合している。
芸者を受け入れる宿泊施設が圧倒的に少ないのである。世の趨勢か、
1泊2食10,000円以下のディスカウントホテルが次々と誕生している。
そんなこんな事情を斟酌すれば、脚光を浴びている割には
一般的に芸者衆の年代は高く生活の厳しい置屋も多いと聞く。パンフの中で、
市長を始め業界トップは、芸妓衆を日本一と持ち上げているが、この先、
彼女たちを枯渇させない具体的な生活環境の整備をお願いしたいものである。