今日は町内の清掃を終え、
正午までには上京するため、
”残照の家”関連を先送りして
高橋弘会長(万葉倶楽部)の自伝、
”わが人生”その(31)を掲載する。
・・・
ー熱海の海岸沿いを走る国道135号に、
朱色の欄干の
逢初橋という橋があります。
伊豆山神社に身を潜めていた
源頼朝と、
婚礼を逃げ出してきた
北条政子が再会したと云う
ロマンチックな
伝説が残る橋です。
自宅からほど近い、
この逢初橋のたもとに
貸店舗を見つけました。
約23㎡で家賃は月額7千円でした。
その賃貸契約を結んだときのことです。
高校の商業科で
商業文書の書き方を学んだ22歳の私が、
その場で淡々と
契約書を作成したところ、
大家さんが大変感心してくれました。
「若いのに一人できて
すらすら契約書を書けるなんて
大したものだ」
そして実印として
三文判を登録して持っていったことを、
大家さんはまた誉めてくれました。
「商売柄いろいろな人の
ハンコを見てきたけれど、
立派なハンコを持っているひとに限って
出世しないんだ」
アンタはなかなか見どころある」。
この言葉が頭に残り、
私は立派なハンコを
使ったことがありません。
店舗の移転を機に、
私は店の名を
「アルプス写真」に変えました。
1957年8月のことでした。
(つづく)