ネオ金色夜叉(大林まゆみ)第1回

 

今羽田空港に向かっている。今日から2泊3日の予定で韓国を訪問する。
フライトが午後12時30分なので遅くても2時間前には、
アシアナ航空のカウンターまで到着しなければならない。今回は、

網代の菊間昌孝氏(菊貞商店社長)と通訳として在留韓国人でIT関連に従事する、
KiChan,SONG氏が同行する。現地での宿泊先はカンナム区の
イビスエンバサダーホテルに2泊する。ただ今日は、午後3時前後に
金浦空港に到着後即、待機している車でヨジュという町まで直行しなければならない。
ヨジュではKiChan,SONG氏にアポを取って頂いている某海産物問屋を訪問し、
網代のひもの家族プロジェクトに不可欠な”とある機材”を購入する予定である。

詳しくは帰国後に記載するが、今回は強行スケジュールなのでPCは携行せず、
先日、日本ストーリーデザイン大賞金賞に輝いた、

大林まゆみさんの「ネオ金色夜叉」を3回に分けて掲載する。

大林さんといしだ壱成さん

「ネオ金色夜叉」(1)大林まゆみ

ー早朝の熱海。資産家富山の豪邸に、
カゴに入れられ、産着にくるまれた赤ん坊が泣いている。
富山が出てきて、生まれたばかりの子を抱き、家に入っていった。
それから19年。

大学生の佐間寛一は熱海で人気の老舗旅館の一人息子。
幼いころから周囲にちやほやされて可愛がられ、
俺様至上主義の、人の話をまるで聞かない男になっていた。
寛一の関心ごとは鴫沢宮子だ。宮子は有名人の寛一が
唯一付き合う人間として有名だった。二人は小学校からの付き合いだ。

宮子は早くに両親を亡くして施設育ちだが、
頭の回転が速く、喜怒哀楽がはっきりしている。
媚びない宮子に、寛一は惹かれていた。高校を卒業して就職が決まった宮子に
寛一は就職祝いのハイヒールを贈り、送迎を毎日行うと宣言した。
宮子はプレゼントだけでいいと笑って断ったが、
その日を境に寛一は用事を作っては送り迎えを買って出た。

車で待っていると宮子が怒るのでバスにも電車にも乗るようにした。
二人は恋人同士と噂されているが、お互いを意識しながらも、未だ友人どまりだった。
ある日寛一の父が、相談があると言って部屋にきた。
寛一は出かけると言い捨てて、話を聞こうともしない。
追いかけるように父が言った。

「旅館経営をしてみないか」と。寛一は父親の後を継ぐ気はさらさらなく、
継がない言い訳として、宮子とすでに将来を誓い合ったと嘘を言い、
大学を卒業したら結婚して、二人で海外をきままに旅して、
その日暮しをして生きたいと言い捨てた。宮子に会わせてほしいと願う父。
卒業後に会わせると煙に巻く寛一。しかしその日から数日後、

宮子はあろうことか熱海きっての資産家富山の養女になった。
宮子の就職先の温泉旅館のオーナーでもあった富山に商売の才能を見いだされ、
最初は冗談交じりに求婚されていたが、あっけらかんと断ったことで今度は
養女の話が舞い込んだのだ。富山は若い感性で熱海全土を変えていってほしいと願った。
高齢の上に病気もちの富山の心配は死後の財産の使い道だった。
一人娘はすでに夫婦とも他界、ゆえに孫もいない。
だから熱海の地で儲けた金は熱海に還元したいと富山が語る。
周囲の反対を押し切り、富山は全財産を宮子に生前贈与した。それと同時に温泉街の
活性化と観光集客責任者としての地位も、宮子へ与えた。

(つづく)

村山憲三 ▪︎熱海市議会議員(5期)  

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